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伊藤孝英
カイロプラクティックそのまんまサンシャイン院長
RMIT大学(ロイヤルメルボルン工科大学)日本校卒業。B.C.Sc(カイロプラクティック学士), B.App.Sc.(応用理学士)。従来の筋骨格系障害としての腰背部痛という観点から、生物社会心理的要因としての腰背部痛へとシフトチェンジしてマルチモデルで腰痛ケアをしています。鬱・不安などの気分障害で過度な薬物療法に疑問をお持ちの方もお気軽にお問い合わせください。
そのまんまサンシャイン公式ホームページ
筋骨格系の症状はもとより代替医療のセカンドオピニオンもお気軽に聞きにきてください。https://chirosonomanma.com

ヘルニアと画像診断されて、どうしたら良いか不安な方へ

目次

椎間板ヘルニアは8週で自然消滅が証明

時間が解決する

椎間板ヘルニアを宣告されて具体的な指示をもらえなかった方。キツイ症状の時は初診時にある程度の青写真をお伝えしないと、不安で仕方ありません。

腰痛などのどれほどキツイ症状でも、まずは3~5週間くらいのスパンでは考えましょう。具体的には個々の症例によって勿論経過は違いますが、1週間でどうにかしようなどと考えないほうが良いです。

多くの経験から出されたプロトコルは、多くの椎間板ヘルニアのケースでも経過とともに症状から解放されていきますからご安心ください。

次の研究は2001年の日本の研究です。

 ■新潟がんセンター整形外科が行なった後ろ向き研究によると、手術をしなくても非内包性椎間板ヘルニア(椎間板脱出・遊離脱出)は約8週間で自然に消失する事実が明らかとなり、この方針に従って椎間板手術の年間件数を50%低下させることに成功。

ドクター

症状出現後8週間以上経過してから手術を行なった場合、線維輪を突破した非内包性椎間板ヘルニアは稀にしか見つからなかったことを契機にこの研究が始まりました。

有痛性の非内包性椎間板ヘルニアは8週間の忍耐が役立つというわけです。

かれこれ20年近く前の日本の研究でも自然寛解が証明されているのに、未だに発症後すぐに手術を勧める病院があれば考えなおしたほうが良いかもしれません。

鬱と不安と痛みには非常に大きな関連性

腰痛、脚の痺れもそうですが、気分の落ち込み、不安、身体機能の低下は同時に診ていく必要があることが精神科医療から言われています。

悩める人は身体が痛いですし、身体が痛い人は何かしらの不安を抱えていることが分っています。

2008年の精神医学の研究
一部の医師は疼痛の治療によってうつ病や不安障害も改善すると信じているが、もし医師が疼痛の治療だけに集中すれば誤診と過少治療に繋がる可能性がある

Bair MJ, Wu J, Damush TM, Sutherland JM, Kroenke K. Association of depression and anxiety alone and in combination with chronic musculoskeletal pain in primary care patients. Psychosom Med. 2008 Oct;70(8):890-7. doi: 10.1097/PSY.0b013e318185c510. Epub 2008 Sep 16. PMID: 18799425; PMCID: PMC2902727.

皆さんがそうであるように、多くの方が苦しみを抱え、不安で楽しみが少ない生活状況になっています。

ヘルニアは「状態を表す言葉」

状態を表す言葉(イメージ)

まずヘルニアというのは状態を表している言葉です。herniate(する)で飛び出るという意味です。

状態を表す言葉ですから痛みや痺れを表しているわけではありません

例えば鼠径ヘルニア(そけいへるにあ)というのがあります。高齢者で大腿部の付け根の鼠径部がプクッと出ている方がいます。けれど痛みはないことも多い。

腰や首のヘルニアに関しても痛みが無い人が半分いる。これを無症候性のヘルニアと言います。例えば下の論文。30年前にそのようなことが解かっています。

1984年発表の医学論文
21~80歳までの腰痛未経験者52名を対象にCATスキャンで腰部椎間板を分析した結果、年齢に関わらず35.4%に何らかの異常が検出され、40歳未満の19.5%に、40歳以上の26.9%に無症候性椎間板ヘルニアを確認

ヘルニア自体は腰痛や痺れの直接的な原因ではないことも多いことが統計的に判ったことです。(数パーセントのヘルニアは排尿困難など実際に神経を押して危険を伴うことがあります。)

腰痛は心理社会的要因を評価が基本

社会的要因評価なくして腰痛をみてはいけない

■腰椎手術予定の患者122名に心理テストを実施し、疼痛・機能障害・就労状況を1年間追跡調査した結果、心理的苦痛(不安や抑うつ)が少ないほうが疼痛改善率も職場復帰率も高かった

心理的苦痛は慢性腰痛の治療成績を左右する。

腰痛があった時に医療機関で「心理的苦痛や社会不安」が背景にあるかどうか、あればそれをケアしていくことが、その後の腰痛の治り具合に関係していくのです。

そのように体が痛い状態の人は、社会的にも何かしら痛い状態であることが科学的に判明しています。これがヘルニアと鬱との関係です。

そのような観点で診てもらったかどうかのほうが、MRIの画像よりも重要になります。

ヘルニア手術は再検討する価値

ヘルニアへの手術を検討している方の表情は非常に暗いものです。恐れている患者さんが可哀そうです。

坐骨神経痛患者507名を対象に手術群と保存療法群を比較した前向きコホート研究によると

1年後の改善率は手術群のほうが優れていたが、労災補償率(46% vs 55%)も失業率(5% vs 7%)も保存療法群と差は認められない。

この論文では1年後は手術群のほうが改善しているとのことですが、別の論文では手術後2か月では優れているが、徐々に保存療法群に近づき、最終的には保存療法に軍配があがるそうです。

患者や臨床医の中には椎間板ヘルニアの手術に過度な期待を抱いている人がいますけど、一時的な下肢痛の軽減効果は認められていても、運動障害や知覚麻痺の改善については結論を出せるほどの十分なエビデンス(科学的根拠)は存在しません。

負荷をかけた椎間板の方が強い

フィンランドの600名への調査では身体負荷が高いほうが椎間板は丈夫だといいます。身長、体重、等速性のリフティング、椎間板の高さ、日中の仕事の動作、年齢を考慮。

BMI高値、引き上げ筋力が強い、作業強度が高いといった因子はすべて椎間板変性を遅らせるらしいということが、椎間板のMRI信号強度スコアから証明された。

体重が重い、ウエイトリフティングの強度、作業強度が高くなると椎間板は薄くなりがちだが、薄くなった椎間板が、むしろ有益な効果をもたらしていることが予測された。密度が上がるのでしょうか。

骨密度と同じように椎間板を若々しく保ちたいなら負荷をかけることです。このように従来の考え方は誤りだったことが証明されています。頭を切り替えましょう。

その上で考える

これらの事を知った上で、それでも手術を検討する必要がある場合もあるでしょう。しかし腰痛の診療ガイドラインでは、最初は保存療法を勧めています。また最初に画像診断することも勧めていません。

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