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伊藤孝英
カイロプラクティックそのまんまサンシャイン院長
RMIT大学(ロイヤルメルボルン工科大学)日本校卒業。B.C.Sc(カイロプラクティック学士), B.App.Sc.(応用理学士)。従来の筋骨格系障害としての腰背部痛という観点から、生物社会心理的要因としての腰背部痛へとシフトチェンジしてマルチモデルで腰痛ケアをしています。鬱・不安などの気分障害で過度な薬物療法に疑問をお持ちの方もお気軽にお問い合わせください。
そのまんまサンシャイン公式ホームページ
筋骨格系の症状はもとより代替医療のセカンドオピニオンもお気軽に聞きにきてください。https://chirosonomanma.com

腰痛の原因は筋膜か!?

マッサージ
目次

筋膜なんだけど定量化するのが現在困難

腰痛の原因が筋膜だ、経絡で治療しているは筋膜だ、筋膜をリリースすれば楽になる、などなど、筋膜が腰痛の原因ということが近年よく言われていいます。

このブログや「そのまんまサンシャイン」のホームページでは今確実に言えるエビデンスしか載せていないので筋膜と腰痛の関連の質の高いエビデンスはありません。

だからといって私個人がどれくらい筋膜が原因だと考えているかは別の話で、私個人はかなりの比重を筋膜が占めていると考えている臨床家の一人です。

腰痛業界、世界のトップ、菊池臣一先生のお話し

菊池先生と記念の一枚

2018年末に幸運にも菊池臣一教授のお話しを拝聴することができました。腰痛に関して世界のトップを走ってきた先生です。メディアでもご覧になったかたも多いと思います。

その講演会で、聴衆のお一方であった鍼灸師の先生から「昨今筋膜が腰痛の原因ではないか?」との質問に菊池先生は「これから間違いなく筋膜は来るでしょう、ただ現段階ではどれくらいの硬さの筋を筋硬結と定義するのかができない。それは年齢によっても変えていかなくてはいけないかもしれない。だからまず筋硬結の定義づけをする必要がある」とご回答されていました。

医学的に定義するのは時間が必要

医学的に定義するのは本当に困難なのだなあと心服しました。

そうですね、われわれ臨床家は単純に触って経験上硬いとか、柔らかいを判断します。

これを数値化したり、性差、年齢などを考慮して定義するのは骨の折れる作業です。もしかしたらAIの発達で、そのようなことも正確に判断できる時代が来るのかもしれませんね。

手の感触を信じている施術家は、そもそも患者さんに機械を使って、この筋肉の硬さを計りますっていうのも違和感があるとおもいます。

これを数値化したり、性差、年齢などを考慮して定義するのは骨の折れる作業です。 言い切るには証拠が必要なわけで、これからその定義づけがされていくということです。

ですから現段階で「心理的要因」で腰痛になることが明らかだと言って、心理的要因に拘りすぎるのはあまり良くないのではないかと私は思います。

Fascia (ファシア)という概念

日々臨床をしていますと多くの場合筋肉、筋膜が張っています。これもイメージ化すると解かりやすいのですが、筋膜というとサランラップの膜のように表面にスラーっと張っている膜というイメージを持ちやすいのですが、実際はタンパク質がメッシュ状にあるというイメージの方が近いようです。

私は臨床家で解剖学者ではないので、どこかで読んだ話を繋げてお伝えしているのですが、筋膜は実際にはファシアというタンパク質構造そのものを言います。

下のオレンジを見て頂くとイメージしやすいのですが、果肉を包んでいる白い部分がファシアです。オレンジの皮の真下にある分厚いのもファシアですが、果肉を隔てている部分もファシア、果肉を包んでいる薄い皮もファシアです。

これらすべてがいわゆる筋膜で、言ってみれば人体構造すべてがファシア(筋膜)とも言えるということです。

厄介なのがこのメッシュ構造のどこが硬くなっても痛みやコリ感が出るということです。腰痛への研究で仙腸関節や椎間関節症候群というのは曖昧な根拠しかなくて関節由来の腰痛が否定されていますが、関節を包んでいる膜や周囲にある筋肉、靭帯もファシアなんですね。

そうすると椎間関節や仙腸関節をアジャストメントすることで筋膜が引き延ばされてリリースされるということも当然あり得るわけです。


■椎間関節症候群への注射療法に関する論文を厳密に分析した結果、椎間関節内へのプラシーボ(生理食塩水)注射は、ステロイド剤や局所麻酔剤と同等の改善効果があることから、椎間関節症候群という病名自体が神話の可能性がある。

AHCPRの『成人の急性腰痛診療ガイドライン』では根拠のない診断名として、線維輪断裂・成人の腰椎分離症・筋筋膜炎・線維筋痛症・椎間板症候群・挫傷・脊椎分離症・腰部椎間板症・椎間関節症候群・変性関節症・捻挫・変形性脊椎症・椎間板障害/裂傷・脱臼・亜脱臼(サブラクセーション)の15を挙げています。

これが関節包靭帯や腱、骨膜といった膜からも症状がでます(と私は考えています)。

そうは言ってもタンパク質構造ですから、年月をかけてかたくなっているファシアは簡単にはリリースされないということです。

それに加えて心理的な要因や、脳の状態が絡んでくるわけですから慢性の腰痛のリリースは簡単ではないのが良く分かると思います。

ですから市販のストレッチポールなどで表面の筋膜(オレンジの皮の下の部分)、浅筋膜の癒着を剥がしても症状がのこってしまうのは深いところの筋膜を剥がすのが困難であるからです。

針治療を超音波撮影で剥がしている模様を動画で見ることもできますが、あれくらいで痛みがどれくらい取れるかは、冒頭申しました通り科学的には確かなことは言えない、ということです。

ですから筋膜がエビデンスとして腰痛の原因だと言い切れるようになるには、まだまだ時間が必要なようですが、おそかれ早かれその日はやってくるだろうと思います。

おまけ:マイオバイブ駆使する

「そのまんまサンシャイン」ではマイオバイブという特殊な振動器具を使用してファシアを極力リリースしていきます。これもエビデンスがある訳ではないのですが、臨床上かなりの効果を期待して頂いても構いません。

マイオバイブ

マイオバイブは筋肉が弛緩しやすい低周波の振動を筋肉に当てていきます。表層の筋肉が緩むのでより深い部分のファシアを刺激してリリース(遊びを作る)ことが出来ます。

針治療ほど深い部分を押すことはできませんが、より広い部分を刺激することができますので、慢性腰痛などにお悩みの方はお近くの施設を検索してみてください。おススメですよ。

椎間関節に問題があると腰痛の原因になると、カイロプラクティックでも勉強します。その椎間関節にブロック注射をしても効果がないとういう論文があります。

椎間関節ブロック注射はプラシーボと同じ

注射器
ブロック注射が効かないんだから椎間関節の炎症ではない

慢性腰痛患者97名を対象に椎間関節ブロックの有効性を6ヶ月間追跡したRCT(ランダム化比較試験)によると、プラシーボ(生理食塩水)群とステロイド群の改善率に差は認められなかった。慢性腰痛に対する椎間関節ブロックに効果はないことが判明。

慢性腰痛患者の椎間関節にステロイドを注射しても効果は認められないことから、慢性腰痛の原因は椎間関節の炎症ではないことが分かります。

ちなみにカイロプラクターは椎間関節症候群 という おおざっぱなカテゴリーで椎間関節異常を考えます。

おそらく関節を構成する靭帯や深層筋の筋膜などの結合組織が痛み直接を出していると私は考えています。
近年のドイツでの研究で明らかにされていることです。

組織的にどうなっていようと、大切なのは社会的、心理的状況が悪化していると腰痛を発症し、慢性化させることは確かだということです。

2021.6追記:その後もさまざまな角度から腰痛の研究は進められていますが、決定打はありません。臨床で思うのは、患者さんが置かれている状況が人によって全然違うので、現場の判断が重要だということです。勿論社会的に窮地に立たされている場合、その評価も必要です。

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