複合介入群の方が回復ポイントは低い
膝の痛み、とくに変形性関節症への対応は我々臨床家泣かせです。一番時間の要する部位だともいえます。われわれも様々な取り組みをする。他の部位と比べて飛躍的に回復することは稀です。
いろいろ自問自答するのですが、変形性膝関節症の治療は、なかなか難しい部位であることは間違いないようです。
退役米軍人への比較臨床試験で、1年を通しての複合的な介入をして、転帰改善わずかという結果が昨年末に出ているようです。通常介入と複合介入の差のようですが、具体的な介入方法については良く分かりません。
米国の退役軍人医療センター1施設で、症候性の股または膝の変形性関節症(OA)外来患者300例と医療提供者30人(クラスター)を対象に、OAの転帰改善に対する患者と医療提供者への複合介入の有効性をクラスター無作為化臨床試験で評価。Western Ontario and McMaster大学変形性関節症尺度スコアは、複合介入群で通常ケア群に対し12カ月時点で4.1ポイント低く(P = 0.009)、わずかな身体機能改善を認めた。
https://www.acpjournals.org/journal/aim
まず言えることは変形性膝関節症を診ていく上で、1.2回の治療で良くなるということは無いということですね。受ける側の患者さんが持っていてほしい情報の一つです。
病院より時間をかけて施術にあたりますので、効果はあるのですが、魔法のようには回復していかないので、根気よくリハビリテーションを続ける必要があります。少なくともこれ以上悪くならないお気持ちが大切です。
当たり前の話ではありますが、なるべく良い状態を作っていくしかないようですね。
人工膝関節置換術も不安などの心理社会的要因がコスト関与
不安などのマイナスの心理社会的要因は人工膝関節置換術(TKR)後の術後コストに大きく影響を及ぼすとされることが分かってきた。
膝骨関節炎の患者218人を対象とし、術後6カ月間に及ぶ前向き研究を実施。
- 心理社会的評価は、不安やストレスに関する評価
- 関節炎自己効力を評価(膝の痛みにどう対応するかやる気がある)
- 社会心理的なサポートの充足感
- 人生に対する楽観度
これらを術後に評価しました。
このような心理的な要因が、人工膝関節置換術のコストに影響するという。
50%が実質入院、手術費用
人工膝関節術後に時間的な損失をコスト計算したものになります。いわゆる社会復帰までの時間と考えてよいです。
- 不安が強いほど、心理社会的サポートの充足度が低いほど、人口膝関節置換術関連のコストが高かった。
- それ以外では、BMIが高いほど、白人でないほど、同様にコストが高かった。
手術の関連期間中の患者さんへの心理社会的介入によって患者の不安を軽減し、心理的サポートを向上させることで術後の総コストを軽減することが可能になるかもしれない」と考察されている。
このようなことは筋骨格系の疾患で、同じようなことが言える。腰痛や、首痛、痺れに関しても、不安を煽らずに、安心、楽観視して社会的なサポートが根底にあれば、多くの痛みは自然治癒するものです。言い換えると痛みを許容できるようになります。